相続時精算課税制度は、一見「2,500万円まで贈与税がかからない」というメリットが強調されますが、一度選ぶと取り返しがつかない制度なので注意が必要です。
① 小規模宅地等の特例が使えないケースがある
■ 小規模宅地の特例とは
被相続人の自宅や事業用地を
最大80%評価減できる制度。
例
土地評価
1億円 → 2,000万円まで圧縮
しかし
■ 相続時精算課税で先に贈与すると
土地は
「相続財産ではなく贈与財産」扱い
になるため
小規模宅地の特例が使えないケースがある
例
親
自宅土地1億円
①普通に相続
1億 → 2,000万評価
②精算課税で生前贈与
1億 → 1億のまま相続税計算
結果
税金が何百万円も増える可能性
※特に多い失敗
- 自宅土地
- 賃貸アパート土地
- 店舗土地
② 暦年贈与(110万円非課税)に戻れない
これは最大の落とし穴です。
相続時精算課税を選ぶと
その親からの贈与は一生ずっと精算課税
になります。
つまり
| 制度 | 非課税 |
| 暦年贈与 | 毎年110万円 |
| 精算課税 | 2,500万円まで一度 |
一見
精算課税が有利に見えますが
例えば
20年間
110万円贈与
110万 × 20年
= 2,200万円
さらに
30年なら
110万 × 30年
= 3,300万円
つまり
長生きするほど暦年贈与が有利
になるケースがあります。
③ 相続税の計算は「贈与時の価格」で戻る
相続時精算課税は
贈与した財産は
相続時に全部足し戻します。
しかし
重要なのは
贈与時の価格で戻る
という点。
ケース1(成功例)
贈与時
土地3,000万
相続時
土地6,000万
→3,000万で計算
これは有利。
ケース2(失敗例)
贈与時
株3,000万
相続時
株1,000万
→ 3,000万で計算
つまり
値下がりしても税金は下がらない
④ 相続税が発生しない家庭では意味がない
相続税の基礎控除
3000万 + 600万 × 法定相続人
例
子2人
3000万 + 1200万
= 4200万円
財産が4200万以下なら
そもそも相続税ゼロ
この家庭が
精算課税を使っても
節税効果はほぼない
⑤ 兄弟トラブルの原因になる
精算課税は
贈与した子だけ得する制度
になりやすい。
例
兄
生前に2,500万贈与
弟
なし
親死亡
兄はすでに
2,500万受け取り済み
結果
兄弟トラブルになることも多い。
⑥ 手続きが面倒(毎年申告)
一度選ぶと
贈与があるたび申告
が必要
税金がゼロでも
申告義務あり
実務でよくある失敗
不動産系で多いのは
① 自宅土地を贈与
↓
小規模宅地使えない
↓
税金増える
② 郊外アパート土地を贈与
↓
評価減使えない
↓
節税失敗
③ 相続税がそもそも出ない家
節税どころか
手間だけ増える
不動産で使うならこのケース
むしろ向いているのは
値上がりしそうな財産
- 株
- 自社株
- 将来開発予定の土地
など。
まとめ
相続時精算課税制度は
「節税制度」ではなく
課税の先送り制度
です。
使い方を間違えると
- 小規模宅地の特例が使えない
- 暦年贈与に戻れない
- 兄弟トラブル
など
大きな落とし穴
があります。


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