土地の有効活用は、必ずしもその土地に建物を建てることがベストとは限りません。「事業用資産の組替え」という視点から見ると、一旦その土地を売却し、売却資金でより高利回りの収益物件(例:中古アパートや商業ビル)を購入する方法も十分に有効です。
「今の土地に建築(新築)案」「売却→組み替え案」「現状保有案(そのまま保有)」の3つを比較する収支・資産評価シミュレーションを作成する際の注意点を、わかりやすくまとめます。
【共通の前提・考慮すべきポイント】
- 税金(特に売却益)
- 長期譲渡所得税:最大20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)。
- 減価償却済み資産の売却は、帳簿価格が下がっているため譲渡益が大きくなりやすい。
- ※減価償却してきた建物を売るときは「取得価格-減価償却累計額=帳簿価格」なので注意。
- 時間軸の設定
- 最低10年、できれば20年程度のシミュレーションが望ましい(収益性や価値の推移を見るため)。
- 利回りの見方
- 表面利回り:家賃収入÷購入価格 → わかりやすいが粗い。
- 実質利回り:経費(管理費・修繕費・空室損・税金など)を差し引いて算出。こちらを重視。
- 空室リスクや賃料下落リスクも織り込む。
【案別の注意点】
① 今の土地に建築案(新築・建て替え)
- 初期投資額が大きい:設計費・建築費・外構費・融資費用など含めて見積もる。
- 完成まで収益ゼロ:建築期間中の空白収支に注意。
- 減価償却可能な期間と額が長く、節税効果は見込める。
- 建築後の**賃貸需要調査(立地やターゲット層)**が重要。
② 売却→組み替え案
一旦売却し、その売却代金でより収益性の高い地域の中古収益物件を現金で購入する
- 譲渡益に対する課税を必ず織り込む。
- 売却費用(仲介手数料・登記費用・測量費など)も見積もる。
- 新規物件選定時は以下に注目:
- 立地と需要:駅近、大学病院周辺などは安定。
- 物件種別と収益性:戸建て賃貸→リスク分散、小型区分→管理しやすい、一棟→利回り高いがリスクも。
- 築年数と構造:RC・鉄骨・木造で耐用年数が異なり、減価償却に影響。
- 一部を売却して資金をつくり、残りを有効活用する「一部売却+一部建築」も有効です。
- 空き家問題の対策にもなります。
③ 現状保有案(そのまま保有)
- 固定資産税がかかり続ける
- 賃貸にも売却にも使いにくい
- 相続時は「土地+古家」の評価で相続税がかかる
- 資金化は難しい
- 現在の収益が今後も安定するか?(築年数・設備老朽化などの確認)
- 大規模修繕コストが将来的に発生する可能性あり。
【まとめのチェックリスト】
項目 | 建築案 | 売却→組み替え案 | 現状保有案 |
---|---|---|---|
初期費用 | 高い | 売却・再取得で中程度 | ほぼなし |
減価償却 | 多く取れる | 物件次第 | 残り耐用年数次第 |
税金負担 | 比較的少ない | 売却時の譲渡所得課税 | 保有中の固定資産税など |
収益性 | 高く設計可能 | 選ぶ物件により高い利回りも | 今のまま維持可能か検討 |
リスク | 建築中の空白期間など | 新規投資先選定の目利きが必要 | 老朽化・賃料下落リスク |
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