◆ 減価償却とは?
建物や設備のような高額な資産を購入したとき、その費用を一度に経費にせず、毎年少しずつ分けて経費にする仕組みです。これが「減価償却費」です。
- 実際に現金が出ていくわけではなく、帳簿上の費用。
- そのため、手元に現金は残っているのに、所得が少なく見える=所得税が減るという「節税効果」があります。
◆ なぜワナなのか?
【1】減価償却費は年々減っていく
- 建物は構造ごとに決まった「耐用年数」で均等に減価償却されます。
例)
・鉄筋コンクリート:47年
・鉄骨造:34年
・木造:22年 - 設備はさらに短く、耐用年数は15年程度が多い。
⇒ 15年を過ぎると、経費にできる額がほぼゼロになってしまう。
減価償却があるとき(=節税できてる時)
- 家賃収入:100万円
- 経費:30万円(実費)+ 減価償却20万円(現金は出ていない)
- 利益:50万円(=100 − 30 − 20)
- 税金:50万円 × 税率30% = 15万円
- 手元に残る現金:100 − 30 − 15 = 55万円
減価償却が終わったとき
- 家賃収入:100万円
- 経費:30万円(実費)← 減価償却はなし
- 利益:70万円
- 税金:70万円 × 税率30% = 21万円
- 手元に残る現金:100 − 30 − 21 = 49万円
👉 税金が増え、手残りが減る(=キャッシュフロー悪化)
【2】ローン返済の落とし穴
- ほとんどの不動産オーナーは「元利均等返済方式」を使います。
方式 | 特徴 |
---|---|
元利均等返済 | 月々の返済額が一定。初期は利息が多く、後半になると元金が増える。 |
元金均等返済 | 月々の元金は一定。初期の返済額は大きいが、総利息は少なく済む。 |
- 問題は「元金の返済は経費にならない」こと。
⇒ 年数が経つほど経費になる利息は減り、経費にならない元金返済が増える。
◆ どうなるのか?
減価償却費が減り、元金返済が増えると…
- 帳簿上の利益(申告所得)は どんどん大きく見えるようになる
- でも、実際に使える現金(キャッシュフロー)は 増えていない
- ⇒ 税金だけが増える!という状態に陥る
◆ まとめ:減価償却とローン返済に潜む「タイムラグ」に注意!
年数 | 減価償却 | 経費になる利息 | 経費にならない元金返済 | 税金 |
---|---|---|---|---|
初期 | 多い | 多い | 少ない | 少ない |
中期 | 減ってくる | 減ってくる | 増えてくる | 増える |
後期 | ほぼゼロ | 少ない | 多い | 高額 |
◆ 対策は?
- 長期的なキャッシュフロー計画を立てておく
- 減価償却が終わるタイミングを見越して「節税以外の戦略」も準備する
- 必要ならリフォームや設備更新で新たな償却資産を作る
このように、減価償却とローンの仕組みは、最初は「節税に有利」に見えても、時間が経つと逆に税負担が増える可能性があるので要注意です。
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