◆ 買い替え特例の基本
- 古いマイホームを売って利益(譲渡益)が出ても、
→ 新しいマイホームを買えば、その利益に対する税金を一時的に繰り延べできる。 - 将来、新しいマイホームを売るときに、そのときまとめて税金を計算する。
◆ 要件(主なもの)
- 売った家も新しく買う家も「居住用」
- 売った年の 前年の1月1日現在で所有期間10年以上
- 売却代金が 1億円以下
- 売却した年の翌年末までに新しい家を取得して住む
◆ わかりやすい例
◎ケース:
- Aさんは10年前に買ったマイホームを
4,000万円で購入し、今年6,000万円で売却。 - 譲渡益は → 6,000万 − 4,000万 = 2,000万円
通常はこの2,000万円に対して約20%の税金(所得税・住民税)
→ 約 400万円の税負担が発生します。
しかし…
Aさんがこの年に 新しいマイホームを5,000万円で購入した場合、
→ 「買い替え特例」を使えば、この400万円の税金は繰り延べされ、
今は払わなくてOKになります。
◆ 注意点
- あくまで「繰り延べ」です。将来、新しい家を売るときに課税されます。
- 「3,000万円特別控除」とは併用不可(どちらか選択)。
- 一度使うと、新しい家に対する取得費が引き継がれ、将来の売却時の税額が増える可能性があります。
◆ まとめ
条件 | 内容 |
---|---|
利用できる人 | 古い家を10年以上持っていた人 |
節税の仕組み | 売却益にかかる税を先送りできる |
メリット | 今の税金負担をゼロにできる(繰り延べ) |
デメリット・注意点 | 将来売るときに税負担が大きくなることも |
📌ポイント
- 節税ではなく、納税のタイミングを遅らせるだけ。
- 最終的に売却して現金化する時には、まとめて課税される。
- 土地・建物の売買で適用されますが、条件が細かく定められているので、事前の確認が必要です。
✅ 制度比較一覧(詳細条件入り)
項目/制度名 | 小規模宅地の特例 | 3,000万円特別控除 | 買い替え特例 |
---|---|---|---|
主な対象税目 | 相続税 | 譲渡所得税(所得税+住民税) | 譲渡所得税(繰延べ) |
適用タイミング | 相続時 | 不動産の売却時 | 不動産の売却&新規購入時 |
対象の不動産 | 被相続人の自宅の土地 | 自分または親族が住んでいた家(居住用) | 自分が住んでいた家+新居 |
節税内容 | 土地評価額を最大80%減額(330㎡まで) | 譲渡益から3,000万円を控除 | 譲渡益への課税を将来に繰り延べ |
所有期間要件 | 特になし(10年未満でもOK) | 特になし(ただし居住期間・使用状況で変動) | 売却する家の所有期間が10年以上(買い替え特例の要件) |
居住要件 | 被相続人が居住用に使用していたこと | 売却直前まで居住、または相続空き家要件を満たす | 売却時まで居住+新居も居住用で購入 |
売却・取得期限 | ― | 売却時の状況に応じて変化(例:相続空き家は3年以内) | 売却の年の前年1月1日から翌年12月31日までに買い替え |
その他の条件 | 同居親族・配偶者・要件満たす別居親族などが相続人であること。一定期間の保有・居住継続が必要。 | 相続空き家の場合:耐震基準を満たす必要あり。家屋を除却または一定の修繕済み等 | 新しい家の取得価格≧売却価格(または調整あり)、売却金額が1億円以下など詳細条件あり |
適用期限 | 適用期限なし(法改正に注意) | 空き家特例は令和9年12月31日まで(予定) | 適用期限あり(令和7年12月31日まで)※延長の可能性あり |
併用の可否 | ― | ✅ 小規模宅地と併用可能 | ❌ 3,000万円控除と併用不可 |
注意点 | 土地の使用状況や相続人の関係性・継続保有に注意 | 「配偶者居住権」や親族居住の場合など一部使えないケースあり | 新居をすぐに売却すると繰り延べが解除され課税される場合あり |
✅ 併用パターン早見表
組み合わせ | 併用可否 | 補足説明 |
---|---|---|
小規模宅地の特例 × 3,000万円控除 | ✅ 可能 | 税目が違う(相続税と譲渡所得税)ため、条件を満たせば併用可 |
小規模宅地の特例 × 買い替え特例 | ✅ 可能 | 相続後にその家を売却して新たに家を買う場合、要件を満たせば併用可 |
3,000万円控除 × 買い替え特例 | ❌ 不可 | どちらか一方の選択が必要(併用不可) |
✅ 具体例で理解する:典型的な活用ケース
▶ ケース①:親の家を相続して売却(節税フル活用)
- 子が親の自宅を相続 → 小規模宅地の特例で相続税評価額を80%減額
- 数か月後に家を売却(耐震リフォーム済み)→ 3,000万円特別控除(相続空き家特例)で所得税ほぼゼロ
👉 併用可!節税効果大
▶ ケース②:自宅を売って新居に買い替え(現役世代向け)
- 10年以上住んだマイホームを売却(譲渡益あり)→ 新たに家を購入
→ 3,000万円控除 or 買い替え特例のどちらかを選ぶ
👉 譲渡益が3,000万円以下 → 3,000万円控除の方が有利
👉 譲渡益が大きく、新居も買う → 買い替え特例で繰り延べも検討
✅ 最後に
- 複雑な条件を整理すると、「税目が違えば併用可能」「譲渡所得税系は一方選択」が基本ルール。
- 選択を間違えると将来の税金負担が増えるので、試算のうえ判断が必要です。
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