1. 🔍 原状回復の原則とオーナー負担になる範囲
原状回復においては、借主が通常通り生活した範囲での損耗や劣化(通常損耗・経年劣化)はオーナー負担とされます(国交省ガイドライン準拠)。
◆ オーナーが負担するべき損耗(例):
- 日焼け・経年劣化によるクロスや床の変色
- 設備(エアコン・給湯器など)の自然故障
- 網戸・パッキン・水道部品の自然劣化
- 畳の自然なすり減り、ワックスの経年劣化
2. 💰 借主に請求できる原状回復(特約の有無で対応)
借主の使用方法に起因する損耗・汚損・臭いは原状回復費用として請求可能です。特に以下のようなケースが代表的です。
🔥 喫煙による損耗
損耗箇所 | 請求可能な作業 | 費用相場 |
---|---|---|
クロス | 全面張替 | 40,000~100,000円 |
天井 | 張替+消臭 | 20,000~50,000円 |
エアコン | 内部洗浄 | 10,000~20,000円 |
臭い除去 | オゾン脱臭等 | 10,000~30,000円 |
※ 喫煙の有無を入居時に明確にしておくとトラブル防止になります。
🐕 ペットによる損耗(ペット可物件含む)
損耗箇所 | 原状回復内容 | 費用相場 |
---|---|---|
床・フローリング | 傷補修・張替 | 30,000~150,000円 |
畳 | 表替え or 新調 | 5,000~10,000円/枚 |
クロス | 張替+消臭 | 40,000~100,000円 |
臭い | 脱臭・オゾン処理 | 10,000~50,000円 |
尿浸透 | 下地交換も発生 | 100,000円以上も |
3. 📄 契約書での防衛策(特約設定)
オーナーとして、以下の特約文言を明記しておくと、費用請求がスムーズになります:
- 「喫煙による壁紙・設備の変色・臭いは借主の費用で原状回復」
- 「ペットによる傷・臭いの補修・脱臭は借主負担とする」
- 「退去時にハウスクリーニング代(例:30,000円)を借主負担とする」
※ 明確な金額提示・範囲記載がある特約は有効性が高い(ガイドライン準拠)。
4. ✅ オーナーが取るべき実務対応(退去前後)
入居時
- 室内の状態を写真で記録し、借主にも共有
- 喫煙・ペット飼育の可否を明文化
- 契約書に特約を盛り込む
退去時
- 借主と立会いし、写真を記録
- 原状回復の見積もりと内訳を明確に提示
- 特約やガイドラインに基づき、合理的な範囲で請求
- 明細に納得しない場合は、第三者機関(国民生活センター等)を案内
🎯 トラブル回避のポイント
- 曖昧な「原状回復」より、特約での明文化が重要
- 借主と立会いの際は感情ではなく記録と契約で対応
- 過剰請求と誤解されないよう、費用根拠や相場と照合
📝 オーナー向け 特約文テンプレート集
【1. ハウスクリーニング費用に関する特約】
(ハウスクリーニング費用)
借主は、本物件の明渡しにあたり、原状回復とは別に、専門業者によるハウスクリーニング費用として○○円(税別)を貸主に支払うものとする。
【2. 喫煙に関する特約】
(喫煙による汚損・臭気)
借主が本物件内で喫煙を行った場合、クロス、天井、設備等に付着したヤニ汚れや臭いによる損耗については、通常損耗・経年劣化によらないものとし、その原状回復費用は全て借主の負担とする。
【3. ペット飼育に関する特約】
(ペット飼育に伴う損耗・汚損)
借主が本物件内でペット(犬・猫・その他動物)を飼育した場合、ペットによる傷・汚れ・臭気等の損耗については、通常損耗に含まず、原状回復費用は借主が負担するものとする。
また、飼育により発生する脱臭・消臭・害虫駆除等の特別清掃が必要となった場合も、その費用は借主の負担とする。
【4. 特殊な使用(DIY・楽器演奏等)に関する特約】
(特殊使用に伴う原状回復)
借主が貸主の承諾を得て本物件に改造、装飾、釘打ち、接着等を行った場合は、退去時に借主の負担と責任において、原状回復を行うものとする。
【5. 敷金からの充当に関する特約】
(敷金の充当)
原状回復費用その他借主の債務については、敷金から優先して充当するものとし、敷金で不足する場合には、借主は不足分を別途支払うものとする。
【6. 原状回復ガイドラインの準拠に関する明記】
(原状回復の範囲)
本契約における原状回復の範囲については、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(現行版)に準拠するものとする。ただし、本契約書に別段の定めがある場合はこの限りでない。
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